2022年02月19日

ルーレットで稼ぎまくったギャンブラーたち

小ネタ
ルーレットで稼ぎまくったギャンブラーたち

ざっくり言うと

  • 一般に、ルーレットはランダムなゲームだと思われがち
  • その定説を覆して大金を稼いだギャンブラーたち
  • リチャード・ジャレッキ、ジョセフ・ジャガー、ビリー・ウォルターズ、ガルシア・ペライヨなど

一般に、ルーレットはランダムなゲームだと思われがちですが、その定説を覆してルーレットで大金を稼いだギャンブラーたちを紹介します。

今回は、牧野武文氏による2013年の著書「カジノを破産させた男たち」から多くを引用しています。


「カジノを破産させた男たち」,牧野武文 (著) ,2013/12/27

 

◆リチャード・ジャレッキ:膨大な出目の記録からルーレットを攻略した秀才医師

リチャード・ジャレッキは、ドイツ生まれのアメリカ人医師で、ルーレットの偏りを利用して、ヨーロッパのカジノを中心に120万ドル以上(現在の貨幣価値で8億円以上)を稼いだとされています。

ジャッレッキの生い立ちや手口は、こちらの記事で詳しく紹介されています。
『8億円以上をカジノの「ルーレット」で荒稼ぎした学者が見つけた驚きの攻略法とは?』

ジャレッキは、ルーレット台も多くの機械と同様に、ボールとの接触などによってホイールが摩耗し、軸が歪み、特定のポケットにボールが入りやすくなっていると考えました。

ジャレッキは、実際のカジノで何ヵ月分ものデータを記録し、出目に偏りのあるルーレット台を特定します。そして、100ドル(現在の貨幣価値で約9万円)ほどを持ってルーレットに挑戦し、わずか数時間で100ドルを5,000ドル(現在の貨幣価値で約450万円)に増やすことに成功します。

そして、ジャレッキは、拠点をドイツに移し、ヨーロッパの高級カジノをターゲットにして、8人ものアルバイトを雇ってルーレットの出目を記録させ、偏りのあるルーレット台を探し出します。

1964年、ジャレッキは、スイスの金融業者から2万5,000ポンド(現在の貨幣価値で約3,000万円)を借りて、6ヵ月間にわたって偏ったルーレット台で勝負し続けました。結果、ジャレッキは、62万5,000ポンド(現在の貨幣価値で約7億4,000万円)を稼ぎだしました。

ジャレッキの噂を聞きつけた新聞社の記者は、勝つ秘訣をジャレッキに質問したところ、「毎日ルーレットの結果を集計して大学のスーパーコンピュータにデータを分析させ、翌日に賭けるべき数を出力させた」と作り話をして煙に巻いています。実際は、特定の出目に偏りがあることを知っていただけにもかかわらず。

 

◆ジョセフ・ジャガー:3日で5億5,000万円を稼いだエンジニア

1873年、イギリスのエンジニア、ジョセフ・ジャガーは、6人のアルバイトを雇って数週間ルーレットの出目を記録させ、1つのルーレット台が7, 8, 9, 17, 18, 19, 22, 28,29に偏っていることを発見しました。そして、モンテカルロの国営カジノを訪れ、7, 8, 9, 17, 18, 19, 22, 28, 29に賭け続け、1日で1万4,000ポンド(現在の貨幣価値で約1億2,000万円)を稼いだとされています。ジャガーは、その後もカジノを訪れ、3日間で6万5,000ポンド(現在の貨幣価値で約5億5,000万円)を稼いだとされています。

 

◆ビリー・ウォルターズ:はじめてコンピューターでルーレットを攻略した男

コンピューターを使って最初にルーレットを攻略したのは、ビリー・ウォルターズと彼のコンピューター・チーム。ウォルターズの本業はスポーツベッティングで、専門の数学者や統計学者を雇い、当時普及し始めていたコンピューターを使ってスポーツの結果を分析し、ギャンブルをしていました。

1986年、ウォルターズは、アトランティックシティの名門カジノ、ゴールデンナゲットに仲間を派遣して、ルーレットの出目を記録し分析させたところ、7,10,20,27,36の出目に偏りのあるルーレット台を発見しました。

その夏、ゴールデンナゲットに現れたウォルターズのチームは、7,10,20,27,36の5つの目に2,000ドルの一点張りをし続け、わずか1日で380万ドル(現在の貨幣価値で約10億円)を稼いだとされています。

 

◆ゴンサロ・ガルシア・ペライヨ:壮絶な最後を遂げた秀才ギャンブラー

1990年代、ゴンザロ・ガルシア・ペライヨも出目の記録とコンピュータによるデータ解析でルーレットを攻略しています。トータル1,500万ドル(約15億円)を稼いだといわれています。

ガルシア・ペライヨは、息子をマドリッドのカジノに行かせ、各ルーレットの出目を毎日記録させます。その記録を自分のパソコンで分析したところ、特定の出目の次は、いくつかの出目が出る確率が高くなることを発見します。

ギャンブルに詳しい人なら、このガルシア・ペライヨの発見を馬鹿するはずです。なぜなら、ルーレットの出目は、数学でいうところの独立事象であり、前回の出目は次の出目に影響を及ぼさないことを知っているからです。しかし、ここが理屈と現実が違うところで、ガルシア・ペライヨの発見はなんと正解だったのです。

ルーレットホイールも機械であり、長い間には軸が歪み、正確に水平ではなくなります。ホイール自体も重量が完全に均一ではなく、重い側と軽い側がどうしても生まれ、ホイールの回転が止まるとき、軸が傾いているため下がっている方向に、ホイールの重い方が止まるようになります。そして、ディーラーは、常に同じ力、同じボールの弾き方をするので、長い間メンテナンスがされていないホイールにはどうしても偏りが生まれてしまいます。

ガルシア・ペライヨは、この特性をうまく使って、「最も状態の良いホイール(偏りのあるホイール)では、12分の9の確率で、次の目を予測できることもあった」と豪語していたとのことです。

マドリッドのカジノを出入り禁止になったガルシア・ペライヨは、1993年にはヨーロッパ中のカジノに遠征し、そして1994年、ラスベガスでギャンブラーとしての最後を迎えます。

ガルシア・ペライヨの最後の勝負は、あまりにもドラマチックです。ガルシア・ペライヨは、それまでの出目から、次は黒の8、黒の31のいずれかが出る確率が極めて高くなると予想し、その2つの目に稼いだチップのほぼ半分を一点張りします。しかし出目は赤の19。(なぜ、赤の19を避けたのかは謎ですが。)

ルーレットのレイアウト見てもらうと分かりますが、赤の19の両隣が黒の8、黒の31です。つまり、ガルシア・ペライヨの予測はほぼ正しかったのですが、不運にもその間にある赤の19にボールが入ってしまいます。(なぜ、赤の19を避けたのかは謎ですが。)

ガルシア・ペライヨは、次も黒の8か黒の31と予想し、加えて、黒の29、赤の12、赤の18、黒の6にもチップを置き、赤の19を除いて、それをはさむように6つの目に一点張りをしました。しかし、再び出目は赤の19でした。(なぜ、赤の19を避けたのかは謎ですが。)

冷静さを失ったガルシア・ペライヨは、残りのチップをすべて黒の8、黒の31に賭けます。しかし、出目は、またしても赤の19でした。(なぜ、赤の19を避けたのかは謎ですが。)

その瞬間、ガルシア・ペライヨは気を失って倒れ救急搬送され、これを機にギャンブラーを引退しています。

 

◆<番外編>2億円を獲得したハイテクギャンブラー

2004年、ロンドンの5つ星ホテル、リッツロンドンにあるカジノ「リッツカジノクラブ」で、38歳と33歳のセルビア人と32歳のハンガリー人女性の3人組がルーレットで130万ポンド(約2億円)を獲得しました。最初の夜に10万ポンド、次の日に120万ポンド勝ったとのことです。

カジノは、この3人組を疑い、監視カメラで確認したところ、不審な動きがあったため、警察に捜査を依頼し、3人は逮捕されることになります。

ロンドン警察の発表によると、押収した携帯電話にはレーザースキャナーが仕込まれており、ボールの回転速度を読み取ることができました。しかしのちの調査で、3人組は、レーザースキャナーではなくホイールがスピンする時間を携帯電話のストップウォッチで計り出目を予測していた可能性が高いとされています。

また、当時の法律では、3人組の手口を罰することができず、9ヵ月後、ロンドン警察は130万ポンドを3人組に返還して捜査を打ち切っています。言わずもがなですが、今は、法律が改正され、機器を使っての賭けは処罰の対象となっています。

 

◆さいごに

今回紹介してきた秀才ギャンブラーとカジノの戦いの中で、ホイールは大きな進化を遂げています。

現在主流のJohn Huxley社スターバースト・ホイールは、ポケットが浅く、フレット部分(ポケット間の仕切り)も鉄でできているため痛みが少なく、ホイールの偏りを利用した攻略法は通用しないようになっています。


John Huxley 32″ Roulette Wheel

また、現在では、カジノもルーレットの出目を記録し、定期的にチェックしているため、偏ったホイールをカジノより先に見つけ出すことはほぼ不可能だと思われます。

一方で、メガネ型カメラなど、高性能デバイスが次から次に登場しており、カジノとハイテクギャンブラーとの新たな戦いが勃発しています。

不謹慎ではありますが、ルーレットを攻略した秀才として、歴史に名を刻む新たなギャンブラーの登場が楽しみです。