2022年02月22日

改正toto法施行、いよいよバスケのtotoがはじまる

小ネタ
改正toto法施行、いよいよバスケのtotoがはじまる

ざっくり言うと

  • 令和2年12月19日、改正スポーツ振興投票法が施行
  • サッカーのみだったtotoにバスケットボールを追加
  • 「単一試合の投票」と「Jリーグ年間順位予想」も解禁
  • しかし、海外のブックメーカーで賭ければ、倍勝ちやすい

2020年12月19日、改正スポーツ振興投票法(いわゆるtoto法)が施行され、これまではJリーグなど国内外のサッカーが対象だったスポーツ振興くじ(愛称toto、BIG)にバスケットボールのBリーグが加わり、また、1試合のみの点数や勝敗、リーグ戦やトーナメント戦のチーム順位を予想する商品の販売が可能となります。バスケくじは2022年の今秋からスタートする見通しです。


●単一試合の投票

対戦カードを1つ決めて、勝ち負け引き分けを予想するくじ。1つの投票に選択肢は3通りしかないため配当金は低くなりますが、当選確率が高いためtotoに慣れないファンも気軽に楽しむことができるくじです。

●Jリーグ年間順位予想
J1、J2、J3のリーグ戦が対象となります。仮に今季から販売が始まれば、リーグ戦が再開される前に購入し、リーグ戦が終了する予定の12月で最終結果が出ることになり、年末まで楽しみが続きます。

 

◆サッカーファンは見向きもしなかったtoto

従来のtotoは、サーカーの試合結果を予想して賭けることができますが、贔屓のチームだけに賭けることも、長期的なシーズンの結果を予想して賭けることもできません。また、BIG、MEGA BIGに至っては完全に運任せで、宝くじの当たり番号を決める手段にサッカーを利用しているにすぎません。

そのため、贔屓のチームを応援したいサッカーファンがtotoを買うことはあまりなく、スポーツくじ売上の約9割を運任せのBIGが占めています。また、平成18年9月にBIGを開始したことで、スポーツくじの売上は1,000億円レベルまで成長しました。


サッカーくじ売上の推移(出典:JAPAN SPORT COUNCIL

 


令和2年度度サッカーくじ売上の内訳(出典:JAPAN SPORT COUNCIL

 


◆「控除率50%のtoto」 VS.「5%の海外ブックメーカー」

スポーツ振興くじ(toto、BIG)は、全投票券の販売額から主催者収入として所定の割合(控除率)を差し引き、残りを当せん者で分配するパリミチュエル方式が採用されています。また、その控除率は50%と非常に高く設定されており、投票券の売上が10億円あったとしても当せん金の総額は5億円しかありません。

一方で、スポーツベッティングの胴元となるブックメーカーは、当せん金の配当に固定オッズ方式(ブックメーカー方式)を採用しており、賭けた時点でのオッズがそのまま払戻金の倍率となります。そのため、決まった控除率はなく、一般に5~10%程度と言われています。

控除率50%と控除率5%では、当せん金に約2倍の開きがあります。同じ1万円を賭けて5万円になるギャンブルと、当せん確率は同じで10万円になるギャンブルがあった場合、前者を選択するギャンブラーは皆無です。

 

◆そして、プロ野球totoも解禁?

2021年4月28日、イギリスのフィナンシャルタイムズは、早ければ2024年に日本のプロ野球とサッカー賭博の解禁が検討されていることを報じています。

同紙によると、Jリーグはすでにtotoで一部解禁されていますが、プロ野球とともに、海外ブックメーカーのようなスポーツ賭博完全解禁の検討が開始されているとのことです。

スポーツ賭博が合法化された場合、市場規模はプロ野球とサッカーを合わせて年間650億ドル(約7兆円)と試算されています。

Covid hit prompts Japan to rethink rules on sports gambling
(コロナをきっかけに、日本でもスポーツ賭博のルールが見直される)

関係者によると、日本政府はコロナで打撃を受けた財政を補うため、プロ野球とサッカーのスポーツ賭博を合法化するための内部協議を開始し、プロ野球は早ければ2024年に、また、サッカーも同年に全面的な規制緩和が行われる可能性があるとのことです。

この背景には、コロナ禍でプロスポーツ界が大打撃を受けたことで、スポーツ賭博の反対勢力が大幅に弱まったことを挙げています。関西大学の試算によると、日本のプロスポーツ業界の2020年上半期の損失は、試合の中止や無観客開催によって、25億ドル(約2,700億円)にのぼります。

この動きの主要プレイヤーは、競馬・競輪などの公営ギャンブルに携わる楽天、サイバーエージェント、ミクシィの3社。
楽天競馬と競輪のKドリームスを運営する楽天は、三木谷社長が設立した日本新経済協議会を通して、日本の観光産業を復興させるためにスポーツベッティングの解禁を求めています。

地方競馬・競輪・オートレースのオッズパークを運営するサイバーエージェントは、将来的にスポーツベッティングが全面的に解禁されれば、スポーツ選手やその所属団体、スポーツ業界にとって新たな収益源になると考えてるとコメントしています。

競輪のWINTICKET(ウィンチケット)を運営するミクシィは、他のスポーツへの賭けの規制が緩和されれば、日本のスポーツ産業の成長のための新たな収益源が強く期待でき、当社もこの分野に貢献したいとコメントしています。

 

◆さいごに

日本国内から海外のブックメーカーに賭けるのは違法ですが、これまでに海外のブックメーカーに賭けて有罪となった事例は一件もありません。過去の有罪事例がないことは、その行為の適法性をなんら保証するものではありませんが、法文上は違法であっても、実際に取り締まらないのであれば、その法文には何の効力も期待できません。

日本国内から海外のブックメーカーに賭ける違法性については、弁護士法人 淀屋橋・山上合同の増山健弁護士の解説が現状を適格に言い当てているように思います。

<日本国内からアクセスした利用者は処罰されないのか?>

『サイト自体は海外で運営されていますが,日本国内にいる人が,海外送金等何らかの形で一定の金額を支出してそれを「賭けた」のですから,単純賭博罪や常習賭博罪の処罰対象となる可能性があることは確かです。(中略)結局,国内からのベッティングサイト利用者は,賭博罪で有罪判決まで受けるリスクが,全くないとは言えませんが,必ずしも可能性が高いわけではない,ということになります。』(増山健弁護士の見解)

オンラインのスポーツ・ベッティングの適法性と注意点

 

このような状況の中、日本のスポーツベッティング市場は、急速に拡大することが見込まれており、世界の大手ブックメーカーの多くが日本人をターゲットにした日本語のサイトを開設し、多くの日本人ギャンブルファンがスポーツベッティングを合法と誤認して、日々違法ギャンブルに興じています。

政府がtotoにバスケットや、単一試合の投票・年間順位予想などの魅力的なコンテンツをいくら提供しようとも、海外ブックメーカーに流出する賭け金を止めないことには、日本のスポーツくじが成功することは難しいと考えざるを得ません。