2022年02月25日

次世代カジノではあらゆる不正が根絶される

次世代カジノではあらゆる不正が根絶される

ざっくり言うと

  • 昨年オープンした次世代カジノ リゾート・ワールド・ラスベガス
  • スマートテーブルを本格的に導入した最初のカジノ
  • すべてのチップにRFIDタグを埋め込みゲーム履歴を100%把握

2021年6月24日にオープンしたリゾート・ワールド・ラスベガスは、「スマートテーブル」を本格的に導入する最初のカジノとなり、すべてのチップにRFIDタグを埋め込み、客のゲーム履歴を100%正確に把握できているとのことです。また、この革新的なソリューションは、客やディーラーの不正を防止するだけでなく、客へのロイヤリティプログラムの提供にも利用されています。

Resorts World to bring next-gen casino to Las Vegas
(リゾート・ワールド、次世代型カジノをラスベガスに導入)

RFIDは、2000年代半ばウィンラスベガスでチップに小さな送信装置が埋め込まれて以来、カジノでは広く使われるものとなっています。当初は、チップの偽造防止にのみ使用されていたRFIDですが、現在では、カジノが顧客の勝敗やプレイ内容を知るためのツールにまで進化しています。

RFIDの仕組みを進化させた「スマートテーブル」では、チップの販売額、チップの換金額、フィル(チップが不足した際の補充額)、クレジット(回収したチップが多くなった際の保管額)など、テーブル上にあるすべてのチップをほぼリアルタイムで計算し、その結果をディーラーに伝え検証できるようになっています。従来、この作業は数時間おきにディーラーが行い、テーブルの収支や不正がないかを手作業で確認していました。

また、「スマートテーブル」によって、ピットボスやカジノマネージャーは、ライブゲームの状況をリアルタイムに把握し、テーブルごと、ピットごと、バカラテーブル全体など、必要に応じたレポートをすぐに入手できるようになっています。

さらに、最新のシステムでは、従来のRFID技術に映像分析技術を融合して、チップの動きに加えて、プレイヤーがどんなハンドや出目で勝ったのかまでを自動で識別し記録することができます

 

◆相次ぐディーラーの不正

マカオ新聞を読んでいると定期的にディーラーの不正が報じられています。
次世代カジノではこのような不正もできなくなるはずです。

マカオ、カジノディーラーが客に扮した仲間と組み不正繰り返す…被害額は半月で約3千万円

警察発表によれば、ディーラーが5月28日から6月2日までの勤務中、テーブルに客とスタッフが不在のタイミングでゲームをスタートし、ゲーム結果が判明した時点で仲間が配当の出る位置にチップを置き、1回あたり6~15万香港ドル(約82~206万円)の配当を出していた。5月28日から6月14日にかけて計18回にわたって犯行を重ね、被害総額は218万香港ドル(約2,988万円)に上るとのこと。

 

マカオ、カジノディーラーが客に扮した仲間と組み不正行為…配当を盛る手口で35回、運営会社に約450万円の損失与える

警察発表によれば、6月30日にカジノ運営会社側からディーラー職スタッフと客に扮した仲間による不正行為に関する通報が寄せられたとのこと。カジノ運営企業の内部調査で、6月9日と15日にかけて、35回にわたって配当を盛る手口があり、32万4000香港ドル(日本円換算:約452万円)の損失が生じたという。通報を受けた後、警察が監視カメラ映像を分析したところ、テーブルに別の客がいないタイミングで、通報通りの不正が行われていたことを確認。すぐにカジノフロアで勤務中のディーラーの男の身柄を拘束したとのこと。

 

マカオ、カジノディーラーが勤務中にチップ着服…約2千万円分、靴の中などに隠す手口で複数回

警察発表によれば、今年4月からチップの着服を続けていたことを認めた上、着服したのはいつもゲーミングテーブル上にあった額面1万香港ドルのチップで、隙を伺って掌の中に隠した後、一旦地面に落としてから靴の中などに隠して持ち出す手口を繰り返していたなどと供述。これまでに143万香港ドル(日本円換算:約2026万円)分のチップを着服したとのこと。

また、古いデータになりますが、Prism Solutions Inc.のレポート『カジノ事業における重大な課題と対策~イカサマ(チート)・不正、ギャンブル依存症、マネーロンダリング~』によると、2015年度のラスベガスの不正による被害総額は推計52億円、発覚した事件数は約600件、逮捕者約1,000人のうち4分の1が中の人(スーパーバイザー、ディーラー、キャッシャーなど)だったとのことです。

 

◆さいごに

カジノの不正といえば、マーティン・スコセッシ監督の『カジノ』の中で、カジノ支配人のエースことロバート・デ・ニーロの名言があります。


<状況>

カジノ支配人のエース(ロバート・デ・ニーロ)が後に妻となるジンジャー(シャロン・ストーン)にはじめて会うシーンです。エースはカジノの監視室のカメラで、ジンジャーが一緒にクラップスに興じる男性のチップをくすねる様子を目にします。

<その時に言った、ロバート・デ・ニーロの言葉>

ベガスは、監視の世界だ。客は勝とうと虎視眈々。
ディーラーは客を監視し、
ボックスマン(※)はディーラーを監視し、
フロアマンはボックスマンを監視し、
ピットボスはフロアマンを監視し、
シフトボスはピットボスを監視し、
カジノマネージャーはシフトボスを監視し、
おれはカジノマネージャーを監視する。
そして、この監視の目(天井に設置された監視カメラ)は、そのすべてを監視する。
加えて、この部屋(監視ルーム)では、イカサマのすべてを知り尽くした大勢の元イカサマ師が見張っている。

(※)クラップスのテーブルで、ゲームの進行を管理・監視するスタッフ

“In Vegas, everybody’s gotta watch everybody else.
Since the players are looking to beat the casino…
The dealers are watching the players…
The boxmen are watching the dealers…
The floormen are watching the boxmen…
The pit bosses are watching the floormen…
The shiht bosses are watching the pit bosses…
The casino managere is watching the shift bosses…
I’m watching the casino manager…
and the eye in the sky is watching us all.
Plus, we had a dozen guys up there…
most of them ex-cheats, who knew every trick in the house.”

おそらく日本カジノは、リゾート・ワールド・ラスベガスと同等かそれ以上のシステムが導入され、監視の目は元イカサマ師からシステムに変わり、一切の不正はできないと考えておいた方がよさそうです。

また、ディーラーの仕事は、面倒なチップの棚卸し作業(Table Inventory)やコンプ提供のための顧客レイティング(評価)も極限まで簡略化され、次のフェーズではミスの許されない配当計算も自動化されることが容易に想像できます。今後、機械に仕事を奪われる職種の上位にカジノディーラーが挙げられるのはそのためです。

今後、ディーラーの仕事は、面倒な作業は機械にまかせて、より顧客サービスを重視した内容に変化していくことになりそうですね。

 

<2024年3月5日追記>
マカオのカジノでRFIDゲーミングテーブルの利用が広がっています。
メルコ・リゾーツ社は、2月29日に行われた第4四半期決算説明会において、マカオの同社カジノで来月からRFIDテーブルを導入すると発表しました。同社の主なマカオ事業は、コタイ地区のカジノリゾート「シティ・オブ・ドリームス」「スタジオ・シティ」、そしてタイパのカジノホテル「アルティラ・マカオ」。

ギャラクシー・エンターテイメント社は、2月28日に行われた電話会議において、すでにRFIDテーブルの導入プロセスを開始しており、年内にすべて立ち上げる予定だと述べています。同社の主なマカオ事業は、コタイ地区の「ギャラクシー・マカオ」とダウンタウンの「スターワールドホテル」。

また、MGMチャイナ・ホールディングス社の「MGMマカオ」と「MGMコタイ」では、既にRFIDテーブルが導入されています。

 

<2024年3月15日追記>
3月14日に開催されたJP Morgan Gaming, Lodging, Restaurant & Leisure Management Access Forumで、MGM・リゾーツ最高経営責任者兼社長のビル・ホーンバックル氏は、RFIDの重要な利点は、ゲーミングチップを個々のプレーヤーにリンクさせることが可能なことで、その結果、海外のプレーヤーを識別し追跡することができると述べています。

また、同氏は、外国人プレーヤー用の特別なRFIDチップを使用することで、これらのプレーヤーを別のギャンブルエリアに入れる必要がなく、中国以外のプレーヤーが生み出すGGRを追跡することができ、このような目的でRFIDを使用することは「真の利点」だと指摘しています。

 

<2024年3月28日追記>
inside asian gamingの報道によると、マカオ政府がカジノライセンスを付与している6つのコンセッション事業者に対して、外国人客の売上を計算するためにRFIDテーブルの導入を推奨しているとのことです。

ほとんどのマカオのコンセッション事業者はすでにスマートテーブルを導入済みですが、2018年、MGMは他社に先駆けて導入しかなり先行してます。inside asian gamingによると、6つのコンセッション事業者のうち5社がウォーカー・デジタル・テーブル・システムズ社のRFID技術を利用しており、1社がエンジェル社のRFID技術の利用を検討していると報じています。

 

<2024年4月8日追記>
GGRAsiaの報道とinside asian gamingの報道によると、スマートテーブルはバカラのプレイを1ゲームあたり5秒短縮でき、客数が増えなくともマカオのゲーミング総収入を6%増加させる可能性を秘めているとのことです。

シティグループのアナリストは、MGMチャイナの2つのカジノのバカラテーブルはすべてスマートテーブル、ロンドナーカジノの140台はスマートテーブル、Wynn Macauの24台はスマートテーブル、Wynn Palaceはまだ導入されていないなどフィールドワークを実施し、現状、マカオのゲームテーブルの10%がスマート化されていると推定しています。

そして、スマートテーブルがさらに普及すれば、プレイヤーのベッティングパターンのデータを収集できることで、プレイヤーのより正確な格付けと、より費用対効果の高いコンプ(無料の商品やサービス)提供が可能になると指摘しています。例えば、バカラで賭け金の10%をサイドベットに賭けるプレイヤーは、メインベットしかしないプレイヤーよりも125.5%価値があると推定できるそうです。

 

<2024年4月21日追記>
エンジェル・マカオ・リミテッド社の倉橋明日香社長によると、RFID技術とAI技術とカメラを統合した同社製品「エンジェル・アイ・コンプリート」は、カジノ運営者がゲーミングチップの盗難を防止したり、ゲーミングテーブルでの不正チップの使用を検知するだけでなく、ゲーミングチップの動き、チップの価値、客一人当たりのベット額、ゲーム結果などのデータポイントの取得と分析が可能。また、常連客への不正なペイアウトなど、ディーラーの不正には即座にアラートを発することもできるとのことです。

また、エンジェル社は、現在、「チップ帰属機能」を開発しており、個別にタグ付けされたチップを一人のプレイヤーに結びつけることが可能になるとのことです。