ざっくり言うと
- 各ブックメーカーのオッズの差を利用した裁定取引(アービトラージ)
- 受講料(約75万円)の返還を求めた裁判で和解が成立し全額返済に
- オッズのアービトラージでの儲け話のほとんどが詐欺なのでご注意を
2020年12月20日、上毛新聞の報道によると、確実に儲かるとうたったブックメーカー各社が提供するオッズの差を利用した裁定取引(アービトラージ)の受講料(約75万円)の返還を求める訴えに関して、被告側が全額を支払うことで和解が成立したとのことです。
賭け屋取引で被告と和解成立 全請求額150万円返金 弁護団が会見
『英国のブックメーカー(賭け屋)を利用した取引で利益が出ると勧誘し、受講料を支払わせるなどしたのは不法行為だとして、群馬県内の20代男女2人が、資産運用コンサルタント業のネクステージ(前橋市表町)と同社の男性社長ら4人に損害賠償を求めた訴訟を巡り、原告の弁護団は19日までに県庁で会見し、返金を請求した全額(約150万円)を被告側が支払うとする和解が成立したと明らかにした。』(上毛新聞)
『弁護団は、受講料として金を集め、多数の友人を勧誘した上位者に高配当する「実質的なねずみ講」で、日本で禁止された賭博行為への勧誘そのものが違法などと主張してきた。調査により、15年からの3年間で、誰も勧誘できなかった人が推計で約2500人に上る一方、5000万円以上得た上位者もいたことが判明したという。』(上毛新聞)
裁判開始時の報道(2017年12月24日、産経ニュース)
「月5万円もうかる。リスクない」賭博高配当約束し75万円支払わせ 前橋市の企業提訴 群馬
『英国のスポーツ賭博業者「ブックメーカー」を使った投資で高配当をうたい、もうけるための講座受講料として1人あたり約75万円を支払わせたのは不法行為にあたるとして、群馬県内の21~22歳の男女3人が22日、前橋市表町の資産運用コンサルタント業「ネクステージ」の代表者らに対し、3人分の受講料約226万円の返還などを求める訴訟を前橋地裁に起こした。』(産経ニュース)
◆ブックメーカーの裁定取引(アービトラージ)とは?
経済学でいうところの裁定取引(アービトラージ)とは、ふたつの場所で価格が食い違っている場合にはそれにつけ込み、安いほうの価格で買って高いほうの価格で売ることで、その利ざやを抜く手法のことです。裁定取引(アービトラージ)が有効なのは、ブックメーカーも例外ではありません。
例えば、錦織選手とジョコビッチ選手のテニスの試合で、あるブックメーカーは錦織選手の勝ちに2.1倍のオッズをつけ、別のブックメーカーはジョコビッチ選手に2.1倍のオッズをつけていたとします。その場合、両方の選手に100ドルずつを賭ければ、どちらの選手が勝っても210ドルの払い戻しがあり、必ず10ドル儲けることができます。
実際に、2008年にアテネ大学の研究者がヨーロッパで行われたサッカー12,420試合でブックメーカーが設定したオッズを調べたところ、アービトラージの機会が63件あったとのことです。また、2009年にチューリッヒ大学の研究者がブックメーカーだけでなく、ベットフェアのようなベッティングエクスチェンジ(ギャンブラー同士による賭け取引所)も含めて調査したところ、矛盾したオッズははるかに多く見つかり、儲けは賭け金の1~2%と少ないものの、全試合の4分の1近くで確実に利益が出せたとの研究結果も報告されています。
◆ただし、2010年以降は通用しなくなった手法
近年、アービトラージの役割はコンピューターが担っており、ギャンブラー側はボット(巡回プログラム)を使ってブックメーカーの各サイトで矛盾したオッズを探し、ブックメーカー側も同じくボット(巡回プログラム)や事業者間ネットワークでオッズに矛盾が生じないよう対策を講じています。
また、ほとんどのブックメーカーは、ギャンブラーの裁定取引(アービトラージ)を禁止しており、それが疑われる場合には、賭け金に上限を設定したり、賭けそのものを受け付けないようにしています。
本件については、「LIST OF BOOKMAKERS.NET」が詳しく説明しています。
ブックメーカーアービトラージとは何か?全容(真実)と知っておきたい活用術
◆さいごに
今の時代においては、ブックメーカーのアービトラージ(裁定取引)をうたった儲け話は詐欺だと思って間違いないと思います。
また、2015年からの3年間にこの話を信じた人が2,500人以上もいたことに驚きました。
くれぐれも騙されることのないようご注意ください!