2024年09月14日

決済代行業者の摘発で見え隠れするオンラインカジノの闇

決済代行業者の摘発で見え隠れするオンラインカジノの闇

ざっくり言うと

  • 大阪府警は、「YOUS CASINO」の賭け金を決済代行した容疑で3人を逮捕
  • 賭け金約50億円のうち約29億円が客に戻り、約20億円が運営元に渡っていたことを確認
  • 約20億円がカジノの懐に入ったのであれば、カジノの利益率はラスベガスの約6倍

2024年9月12日、大阪府警保安課は、海外オンラインカジノ「YOUS CASINO」の賭け金を決済を代行したとして「アシストペイ」社長の韓容疑者ほか、木下容疑者、三反田容疑者の男女3人を組織犯罪処罰法違反(犯罪収益等隠匿)容疑で逮捕したと発表しました。

逮捕容疑は、2022年3月から23年6月までの間、延べ約1万人から「YOUS CASINO」の賭け金約49億8,000万円を集金。この現金を容疑者らの会社と「YOUS CASINO」業者との間での正式な業務取引の費用であるかのように装い、犯罪収益だと分からなくしたとされています。

大阪府警は、賭け金約49億8,000万円のうち約29億円はゲームで勝った客に振り込まれ、差額の約20億円が運営元に渡っていたことを確認。3容疑者には資金洗浄の見返りとして約1億5,000万円が支払われていたとみています。また、カジノの運営にも海外在住の別の日本人が関わっていたとみて捜査を続けています。

 

◆見え隠れするオンラインカジノの闇

今回の事件で最も興味深いのは、オンラインカジノの経営実態が明かされたことです。
「賭け金約49億8,000万円のうち約29億円はゲームで勝った客に振り込まれ、差額の約20億円が運営元に渡り…」
20億円がオンラインカジノ事業者の懐に入ったのであれば、オンランカジノ内に客のクレジットが多少残っていたとしても、まっとうな施設カジノではあり得ない利益率です。そこで、オンラインスロットが中心の「YOUS CASINO」と、ラスベガスを有するネバダ州カジノの利益率を比較してみました。

2004年~2023年9月までのネバダ州カジノでのスロットマシンのホールド率は、年平均で6.43%しかありません。ホールド率とは、ざっくりいうと客が購入したチップをカジノが取り戻した比率のことで、下記の数式であらわされます。

ホールド率=(収益)/(ドロップ)=(ゲームでのカジノ側の儲けの総額)/(Buy-In:客が持ち出したお金の総額)

これだけではよくわからないので補足します。

①ある客がブラックジャックのテーブルにきて、まず100万円分のチップを購入しました。

②最初に買った100万円のチップで4時間プレイしました。一時は120万円まで増えたり、50万円まで減ったりしましたが、プレイ中にチップの追加購入や換金はありませんでした。

③4時間プレイした結果、客は20万円負けて、残りの80万円を持ってテーブルを離れました。

④上記をカジノ側から見れば、カジノ側の儲けは20万円です。

この場合のホールド率は、20万円/100万円=20% ということになります。

そして、2004年~2023年9月までのネバダ州カジノのホールド率の年平均は下記となっています。

ブラックジャック:12.72%
クラップス:14.15%
ルーレット:18.74%
バカラ:12.55%
ミニ・バカラ:10.92%
テーブルゲーム計:13.09%
スロットマシン計:6.43%


<ネバダ州カジノのホールド率推移>(データ出典:ネバダ州ゲーミング管理委員会)
※2023年は9月までの平均値

 

今回の事件で、50億円が入金され20億円がカジノ側の懐に入ったのであれば、ホールド率は驚愕の40%。オンランカジノ内に客のクレジットが多少残っていたとしても、このホールド率はネバダ州カジノのスロットマシンの約6倍です。

「YOUS CASINO」は95~97%のRTP(リアルタイムペイアウト率)を謳っていますが、これでは今回のお金の流れを説明することはできません。今後の捜査ですべてが明らかになることを期待します。

 

関連記事:勝ちやすいカジノゲームは?20年分のカジノ勝率推移
関連記事:カジノのスロットマシンの機械割を調べてみる
関連記事:オンラインカジノは操作されている(NHKスペシャルより)