2022年03月06日

絶対に勝てない闇カジノの罠

絶対に勝てない闇カジノの罠

ざっくり言うと

  • 闇カジノのイカサマで大負けし、逮捕覚悟で自ら通報した客
  • だまされてバカラの胴元になった客、イカサマでサンドバックに
  • イカサマが当たり前の闇カジノで勝てるはずがない

2020年9月15日、神奈川県警は、客にバカラ賭博をさせたとして、カジノ賭博店従業員を賭博場開帳図利容疑で逮捕しました。
神奈川県警によると、この店に初めて来店した30代の男性客が、料金で店側とトラブルになり、「自分ばかり負けている」「イカサマじゃないか。金返せ」と自ら110番通報し発覚。この客は十万円以上を賭けていたとみられています。

 

◆だまされてバカラの胴元になった客、イカサマでサンドバックに

2020年10月4日、愛知県警は、八百長のバカラ賭博で会社役員の男性から現金220万円をだまし取ったとして、詐欺の疑いで三重県鈴鹿市の男と、名古屋市中川区の男を逮捕しました。
愛知県警によると、逮捕された男らは2019年12月、名古屋市東区のマンションで男性客を一時的な胴元にしてバカラ賭博を行い、イカサマで仲間の客を勝たせて店が負けた分を男性客に支払うよう仕向け、現金220万円をだまし取った疑いがもたれています。

また、逮捕された男らはこれまでに他の男4人と共謀し、同様の手口で別の客からあわせて890万円をだまし取ったとして、すでに2回逮捕されています。ディーラー役の男のほかに、客役や従業員役をしていた30代から40代の男4人も逮捕されています。

逮捕された男らは、知り合いの会社役員や自営業の男性を誘い、事前に無料で客としてバカラを体験させていました。その際、イカサマで店を勝たせて胴元が儲かるように見せかけていました。そして、「胴元なら負けるわけがない」とそそのかし男性客を胴元にして、細工をした賭けに参加させ、そして男性客は、わずか2時間で220万円の損失になったとのことです。

イカサマのない正規のバカラであれば、胴元には1~2%のハウスエッジ(胴元の取り分)があり、一定のゲーム数をこなせば理論上は胴元が負けることはありません。今回の逮捕で興味深いのは、胴元有利の前提に付け込み、客をそそのかして胴元に据え、イカサマでサンドバック状態にした手口。バカラの胴元は、ゲームの中では一切選択の余地はなく、イカサマを仕込まれれば青天井で負けることになります。

 

◆闇カジノの実態を明らかにした本

本書の舞台は、闇カジノ隆盛期の90年代半ば~00年代、ディーラーとして闇カジノを30~40店舗を渡り歩いたとする筆者の自叙伝。
闇カジノのえげつなさを伝えるには十分。


「裏カジノディーラー」 , 田村佳彰(著)  , 彩図社


<Amazonの紹介文>

『鉄火場、ヤクザ、ズブズブの社長、バカラ、暴力沙汰、ポンコツ、ガジリ客、身内食い、デコ、反目の襲撃、エゲつない仕掛け……。
華やかなカジノの世界には非日常を求める博打好きが集まる。だが、その世界で生き残れる人間はそう多くはない。皆、自分の内側に渦巻く欲望の業火に焼かれて、その身を焼き尽くしてしまう。
本書では自分がカジノの世界で経験した出来事を赤裸々に記した。固有名詞や店舗の場所、エピソードの細部などについては多方面に迷惑がかかることを考慮し、一部を変更したが、カジノの実情を生々しく活写したものになっていると思う。カジノディーラーとしてこの道に入るところから始まり、青春と共にカジノで過ごした最も濃密な約五年間を業界のタブーを恐れずに書いた。
究極のリアリティで描かれる裏カジノの世界をご堪能あれ。』

筆者は、本書プロローグにて、「本書を読んだ読者の方が、カジノの魅力に取りつかれて身を焼き尽くすことになるか、それとも絶対に近寄ってはならない世界だと誓いを立てるか。筆者の立場から保証することはできない。」と問題を提起します。選択肢は「破滅」か「敬遠」の2択で、「財を築く」が含まれていないことが本書のすべて。


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◆さいごに

闇カジノのイカサマは、カードの中身が見える目印付カードを使う、イカサマ用に並べられたカードの束を使う、1番上のカードを残して2枚目のカードをひくなど、さほど難しいことではありません。店がイカサマをやろうと思えば、簡単に仕込めます。そしてそこには、カジノ側の不正を防止する意味での監視カメラも、カジノ管理委員会も、最強の抑止力となるカジノライセンスすらありません。

海外の合法的カジノが低いハウスエッジ(胴元の取り分)にもかかわらず、莫大な利益を上げることができるのは十分な集客があるからです。しかしながら、闇カジノは非合法がゆえに、大々的な告知ができないことから一握りのお客を相手にせざるを得ず、そこで十分な利益を上げるためにはイカサマも当然ということになります。闇カジノの経営者や従業員は、逮捕されるリスクを背負ってまでやることなので、儲からないことには話になりません。

闇カジノには、イカサマされても文句を言えないリスク、イカサマを発見しても証明できないリスク、勝ってもお金を払ってもらえず泣き寝入りするしかないリスク、そして自身が逮捕されるかもしれないリスクと、そこにはリスクしかありません。


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