2022年03月13日

麻雀店摘発、賭博開帳図利罪で起訴(広島)

麻雀店摘発、賭博開帳図利罪で起訴(広島)

ざっくり言うと

  • 広島地検は、広島市の麻雀店を賭博開帳図利罪で起訴
  • これまで社会通念的に社交の範囲での安価な賭け麻雀は黙認されてきた
  • 「白河の 清きに魚も住みかねて もとの濁りの 田沼恋しき」

2022年2月20日、広島県警は、広島市中区薬研堀(やげんぼり)の麻雀店を客に賭博をさせたなどとして店の経営者と従業員を、賭博をしたとして税理士の男ら客3人を逮捕しました。そして、2022年3月11日、広島地検は、麻雀店の経営者を賭博場を開き客に賭博をさせて場所代などを徴収したとして賭博開帳図利罪で起訴しました。一方で、従業員や客は不起訴となっています。

 

◆麻雀店の店長が逮捕された過去の事件(名古屋)

2018年2月7日、愛知県警は、名古屋市中区の「麻雀リオ」で総額約22万円の賞金を提供する大会を開いたとして、名古屋店の店長を風営法違反(賞品提供)の疑いで逮捕しました。

愛知県警によると、2017年12月、中署が風営法に基づき店に立ち入りをした際、大会の資料を見つけたことが今回の逮捕の発端。「麻雀リオ」は、事前に店に「景品出します」と書かれたチラシを貼り出して参加者を募り36人が参加(参加費3,000円)。賞金は、優勝者10万円、準優勝者3万円など計22万4,000円だったとのこと。

風営法は、麻雀店が大会を主催し、賞品や賞金を出して客の射幸心をあおる行為を禁じています。また、参加者から集めた「参加費」を賞金・賞品の原資にあてることも禁じています。一方で、参加費を運営費にあてたり、スポンサーから協賛を受けた賞金・賞品を贈ったりすることは認められています。

 

◆賭け麻雀はいくらまでOKなのか?

2020年12月24日、緊急事態宣言の中、点ピンの賭け麻雀をしていた問題で刑事告発され、起訴猶予となった東京高等検察庁の黒川弘務元検事長について、東京検察審査会は「起訴すべきだ」という議決をくだし、検察は再び捜査することになりました。

2020年7月、東京地方検察庁は、「1日に動いていた金額が多いとは言えない」などとして起訴猶予処分としましたが、この決定を不服とする市民団体や弁護士らが東京検察審査会に審査を申し立てていました。

東京検察審査会が起訴相当とした理由は以下となっています。

『議決の中で審査会は「賭けマージャンはいわゆる『点ピン』と呼ばれるルールで行われ賭け率や賭け金が格段高いとはいえないが起訴猶予が当然というほど射幸性が低いとも言えない。東京高検検事長という重責にあり、違法行為を抑止する立場にあった元検事長が漫然と継続的に賭けマージャンを行っていたことが社会に与えた影響は大きく動機や経緯に酌むべき事情はない」と指摘しています。』(NHKニュースより)

2021年3月、東京地検特捜部は黒川元検事長を単純賭博罪で略式起訴し、東京簡易裁判所は黒川元検事長に罰金20万円の略式命令を出しました。

本件で、テンピンの賭け麻雀が違法で有罪という前例ができたことになります。

 


◆さいごに

違法な麻雀大会を開催して逮捕された名古屋の事件とは異なり、今回の広島の事件は、純粋な賭博開帳図利罪での起訴となります。

麻雀店で賭け麻雀が行われていることは多くの人が知るところです。しかしながら、麻雀店が摘発されるのは年に数件にとどまります。今回の広島の件がなぜ起訴に至ったのかは不明ですが、考えられる原因として、よっぽどの高レートで賭け麻雀が行わていたか、イカサマなどで何らかのトラブルが発生し警察に通報が入ったか、賭け麻雀で得た利益が暴力団の資金源になっていたかなど。

これまで社会通念的に社交の範囲での安価な賭け麻雀は黙認されてきましたが、今回、賭け麻雀がなされていたことを理由に麻雀店が摘発されたのであれば、今後、ほとんどの麻雀店は存続しえないことになります。

賭博が違法反であることは重々承知の上で、江戸時代の有名な狂歌をふたつ。

「田や沼や 濁れる御世をあらためて 清く澄ませ 白河の水」
汚職にまみれた田沼時代を揶揄し、その後を託され、寛政の改革を進めた松平定信に江戸庶民が期待した歌。

「白河の 清きに魚も住みかねて もとの濁りの 田沼恋しき」
松平定信の改革のあまりの引き締めに江戸庶民が辟易し、汚い利権がらみであっても自由で景気が良かった田沼時代を懐かしむ歌。

※田沼・・・賄賂政治家の代名詞として知られる田沼意次。松平定信の前の老中首座。
※白河・・・倹約と徹底的にクリーンな政治を目指した元白河藩主の松平定信。

うまい落としどころがみつかるといいのですが。