2022年03月31日

1.2倍配当のブラックジャックを違法と訴えたプレイヤー敗訴

小ネタ
1.2倍配当のブラックジャックを違法と訴えたプレイヤー敗訴

ざっくり言うと

  • ブラックジャックの1.2倍配当を違法としてカジノを訴えた本件
  • 最高司法裁判所は、1.2倍配当を適法だとして訴えを棄却
  • 1.2倍配当のブラックジャックは日本カジノにも導入される見込み

2021年6月23日、2019年にオープン当時のアンコール・ボストン・ハーバー(Encore Boston Harbor)がブラックジャックの1.2倍配当を違法として訴えられた件、判決が出ました。

Blackjack Players Who Sued Massachusetts Casinos Over ‘Illegal’ Odds Learn House Always Wins
(マサチューセッツ州のカジノを「違法」オッズで訴えたブラックジャックプレイヤーは、カジノが常に勝つことを学ぶ)

一般にブラックジャックのゲームでは、ブラックジャック(Aと絵札・10の組み合わせの21)で賭け金に対して1.5倍(3 to 2)の配当がなされてきました。

しかしながら、ブラックジャックのゲームは、ハウスエッジ(胴元の取り分)が約1%と、極めてカジノ側が儲かりにくいことから、最近ではBJ成立時の配当を1.2倍(6 to 5)にするカジノが増えています。

また、日本のカジノ管理委員会の発表によると、これから誕生予定の日本カジノでも、1.2倍配当のブラックジャックは導入される見込みです。

 

◆1.2倍配当の何が問題なのか?

訴訟を提起したA. Richard Schuster(以下、シュスター氏)は、BJ成立時の配当が1.2倍と低く設定されているため、プレイヤーの利益が不当に奪われていると主張しています。

シュスター氏の主張は、マサチューセッツ州のゲーム規則は、特定の条件を満たすことでBJ成立時の1.2倍配当を認めている。具体的には、ゲームに使用するカードを1~2デック(組)、俗に言うハンドヘルド(もしくはシングル・デック、ダブル・デックス)に限ったルールとなっている。しかしながら、アンコール・ボストン・ハーバーは、8デックス(組)のカードを使用した、俗にいうシューゲームのブラックジャックでも、BJ成立時の1.2倍配当を行っており、これが州のゲーム規則に違反していると指摘しています。

ちなみに、プレイヤーがベーシック・ストラテジーを使用してブラックジャックをプレイした場合、使用するカードのデック数によって、ハウスエッジ(胴元の取り分)は以下の増減があります。

1デック  ー0.02%
2デックス +0.31%
4デックス +0.48%
6デックス +0.54%

つまり、使用するカードのデック数が少ないほどカジノが不利になるため、1デック・2デックスに限ってBJ成立時の1.2倍配当を認めているという話です。

また、シュスター氏は、BJ成立時の1.2倍配当によって、プレイヤーが50ドルを賭けて1時間プレイした場合、BJ成立時の1.5倍配当と比較すると35.60ドル多く負けることになりこの平均的な損失額に、1テーブルあたりプレイヤー5人、20テーブル、カジノの営業時間(24時間)を掛け合わせると、アンコール・ボストン・ハーバーが毎日顧客から8万5,440ドル、毎年3,000万ドル以上を搾取していると主張しています。

そして、シュスター氏は、マサチューセッツ州で1.2倍配当のブラックジャックは違法であり、カジノは1.5倍配当を支払うべきだとして訴えを起こしました。

 

◆判決はプレイヤーの敗訴

最高司法裁判所は、ゲームの配当オッズがアンコール・ボストン・ハーバーの各ブラックジャックテーブルに明確に印刷されていること、また、最低ベット額の高い1.5倍配当と低い1.2倍配当の両方のテーブルがある中で、プレイヤーが自ら1.2倍配当を選んでいることを理由に、プレイヤーの訴えを棄却しました。

本件は、マサチューセッツ州ゲーミング委員会のルールブックの記載ミスから生じたもので、1.2倍配当で支払われる標準的なブラックジャックゲーム(6デックス、8デックス)とシングル・デック(ハンドヘルド)の「6/5ブラックジャック」を混同したことに起因するとのことです。州の規則が禁止しているのは後者のゲームだけです。


The Truth About 6:5 Blackjack(5分56秒、英語)

 

◆さいごに

コロナ禍で久しくラスベガスに行けていませんが、最後に行った2019年末には、最低ベット額の低いブラックジャックのテーブルは1.2倍配当に、ルーレットには「000(トリプルゼロ)」が設けられ、プレイヤーに厳しいテーブルが随分増えていました。

ブラックジャックの1.2倍配当とルーレットの「000(トリプルゼロ)」は、たとえ最低ベット額が低くても絶対に近寄ってはいけないゲームです。

余談ですが、カジノが最も嫌う客は、大きく賭けての1回勝負か、2回勝負しかやらない客です。
その理由は、これが客の勝つ確率が最も高くなる賭け方だからです。

1.2倍配当のブラックジャックや「000(トリプルゼロ)」のルーレットに賭けるぐらいなら、最低ベット額が高くても条件のいいテーブルで数回だけ大勝負する方が賢明な戦略となります。