ざっくり言うと
- ラスベガスは、2017年7月1日に嗜好用大麻の販売を解禁
- 街のいたるところにディスペンサリー(大麻販売店)が登場
- 日本人でも簡単に買えて吸えるが、日本の法文上は違法
最近、テレビでもネットでも、芸能人の薬物逮捕のニュースを目にしない日はありません。また、ラスベガスから帰ってきたら人の顔を見るなり「いいマリファナあった?」と聞かれることが多々あり、今回はラスベガスの大麻(マリファナ)の話です。もちろん、超慎重派のGamble GOはやっていません。念のため。
※本記事は、大麻(マリファナ)を推奨するものではありません。ラスベガスの現状と大麻のリスクを正しく伝えることを目的としています。
◆ラスベガスでは、日本人が大麻を吸っても大丈夫?
結論から言えば、
日本人でも普通に大麻販売店に入れて、
日本人でも普通に大麻が買えて、
日本人でもルールを守って吸えば、
(ラスベガスでは)捕まることはありません。
ただし、日本の法文上は違法です。
ラスベガスでは、2017年7月1日の嗜好用大麻の販売解禁によって、街のいたるところにディスペンサリー(Dispensary)と呼ばれる合法の大麻販売店が登場しています。
ディスペンサリーには、米国内で37店舗を展開する大手のMedMenや、一見、美術館と見間違えるほど立派でおしゃれなPlanet13など様々なタイプの店があります。
画像出典:Planet13 プレスキットより
画像出典:Planet13 プレスキットより
<参考>ディスペンサリーについては、こちらの記事が詳しく紹介していました。
「ラスベガスに見る最先端大麻ディスペンサリー事情」
こちらで紹介しているような大手のディスペンサリーは、21歳以上で、身元をパスポートで証明すれば、日本人でも普通に入れて、普通に大麻製品を買うことができます。ただし、路地裏にあるような小さなディスペンサリーは、お店ごとに対応が違うようで正直よくわかりません。
あと、大麻製品を購入した履歴は記録として保存されます。
大手のディスペンサリーは、あらゆる種類の大麻製品を販売しており、もっともオーソドックスな花の部分を乾燥させたバッズから、最近、某アスリートが密輸しようとして捕まった大麻ワックス、その他、クッキー、チョコレート、グミなどの食品から化粧品まで多岐にわたります。
大麻の値段はピンキリですが、一般的なバッズで1グラム15~20ドル、1グラムだとジョイント(紙巻きたばこのように紙で巻いたもの)で吸うなら3回分ぐらいです。基本はオンス(3.5グラム)単位で売られています。ちなみに、最近の国内闇市場の値段はわかりませんが、以前は田舎だとざっくり1グラム10,000円と言われていたので、ディスペンサリーでの値段は格安に思えます。
◆でも、日本の法文上、違法なんですよね?
通達:注意喚起(カナダにおける大麻(マリファナ)の合法化について)
『2018年6月21日に成立しました「カナダにおける大麻に関する法律」が10月17日より施行されます。一方、日本の大麻取締法において、大麻の所持・譲渡(購入含む)等については違法とされ、処罰の対象になっております。この規定は海外において行われた場合でも適用されることがありますので、在留邦人や日本人旅行客の皆様におかれましては、これら日本の法律を遵守の上、日本国外であっても大麻に手を出さないよう注意願います。』
この通達は、2018年にカナダが大麻を合法化した際、外務省から出されたものです。日本の大麻取締法では、大麻の所持、譲り受け、譲り渡しについて5年以下の懲役と定められています。しかしながら、大麻の使用についての罰則は定められていません。
<大麻取締法 第24条の2>
大麻を、みだりに、所持し、譲り受け、又は譲り渡した者は、5年以下の懲役に処する。
2 営利の目的で前項の罪を犯した者は、7年以下の懲役に処し、又は情状により7年以下の懲役及び200万円以下の罰金に処する。
一般的な解釈では、日本人が海外で大麻を吸った場合、上記の大麻の所持や譲り受けの犯罪要件に抵触し、そして、それは海外での行為についても適用されるとされています。つまり、海外の合法化された国であっても、大麻を吸うと法文上は違法となり、これは外務省の通達からも明らかです。
◆でも、逮捕されない?
前述のとおり、法文上は明確に違法なのですが、実態としては、海外の合法化された国で大麻を吸っても逮捕されることはないようです。その理由は、日本の捜査機関の捜査権が海外まで及ばない、つまり、日本の警察や麻薬取締局が犯罪を立証できないことによるようです。言葉を選ばずに言えば、日本の捜査機関が大麻を合法化している国相手に捜査協力を依頼しても、大麻を吸ったかどうかだけでは相手にされないということのようです。
◆ただし、吸う場所には注意が必要
ラスベガスでは、街のいたるところで大麻のにおいを感じますが、大麻を吸う場所だけは自宅などプライベートな場所に限ると厳密にルールが設けられており、これに違反すると600ドルの罰金が科せられます。言わずもがなですが、カジノ、レストラン、バー、公園、道路などはすべて公共の場所です。また、ラスベガスを有するネバダ州の法律では、カジノから1,500フィート(約450メートル)以内に大麻関連の施設を開設することを禁止しています。
そして、ホテルの客室も喫煙は禁止されているため、観光客は大麻を吸う場所がありません。ちなみに、長期滞在型で喫煙可のコンドミニアムなどはグレーゾーンのようです。
<2023年5月28日追記>
2022年6月、ラスベガス初のマリファナが吸えるホテル「The Lexi」がオープンしました。最先端の空気清浄システムが設置された部屋の料金は、1泊あたり180ドルから400ドル。
このホテルは、2022年3月、フェニックスに拠点を置「Elevations Hotels and Resorts」が64室のホテル「Artisan」を1,190万ドルで買収して誕生しました。64室のうち、4階にある22室の客室はマリファナの喫煙OKとなっています。
しかし、ラスベガスのあるネバダ州の法律では、嗜好用マリファナは、民間の住居またはマリファナラウンジのライセンスを持つ事業所内でしか吸うことができないとされています。そして、ここで問題となるのが、ホテルの部屋は私有地なのか、公共の場なのかという話です。大麻法を専門とするAmanda Connor弁護士は、「ホテルの部屋は、一般の人がその部屋を借りるために営業している公共の場だと主張する人がほとんどだと思います」と指摘します。となると、「The Lexi」のマリファナルームは、残念ながら、そう遠くない将来、撤去されることになると予想されています。
<2023年6月22日追記>
2023年6月20日、ラスベガス市議会は、プラネット13とスライブ・カンナビス・マーケットプレイスに喫煙ラウンジを増設するライセンスを承認しました。
◆さいごに
日本では「悪」の象徴とされる大麻が、ラスベガスでは単なる嗜好品の域を超えて、貴重な観光資源となり、エンターテインメントの中枢にまで躍り出ています。これは、日本人と西洋人の文化の違いによるものなのでしょうが、あまりのギャップの大きさに頭が混乱してきます。
ラスベガスでは、あまりにも身近な所に大麻があふれているため、日本人も合法なのかと誤認してしまいそうですが、日本の大麻取締法が改正されない限り、日本人が大麻を楽しむのは違法であることをお忘れなく。
また、海外の先進国からは数十年遅れて、やっと日本にもカジノが誕生しそうですし、日本で大麻が解禁される日もそう遠くないのかもしれません。