2023年10月05日

バカラのカードカウンティングで4,700万円を騙し取ったイカサマ師

バカラのカードカウンティングで4,700万円を騙し取ったイカサマ師

ざっくり言うと

  • マリーナ・ベイ・サンズのバカラでイカサマをして捕まったグループの裁判
  • サンズから433,730シンガポールドル(約4,700万円)を騙し取った疑い
  • イカサマグループのひとりが犯行を認める
  • 逃亡の際、イカサマグループは、ホテルの部屋に79万ドル分のカジノチップを残す

2023年10月5日、シンガポール マリーナ・ベイ・サンズのバカラでイカサマをして捕まったグループの裁判が行われました。イカサマグループのひとり、マレーシア人のタン・キアン・イー容疑者は、裁判の中でシンガポールのカジノ管理法に基づく4つの罪状を認めました。

タン・キアン・イー容疑者は、2022年12月16日から23日の間にマリーナ・ベイ・サンズから433,730シンガポールドル(約4,700万円)を騙し取った疑いが持たれていました。

また、この事件では、台湾人のホン・ジョン・ハオ容疑者とマレーシア人のチャイ・ヒー・キョン容疑者の2人も起訴され、現在係争中です。また、ホン容疑者のガールフレンドのチョウ・ユールン、ワン・ユー、そのガールフレンドのホン・ユーウェンの3人もイカサマグループの一員として告発されています。

2022年12月24日、カジノの監視部門のスタッフが前日に起こった暴力団員の不審な行動を監視カメラで調べていたところ、偶然、ホン・ジョン・ハオ容疑者のイカサマを発見しました。ホン容疑者はすぐに逮捕され、ホン容疑者の逮捕を知った仲間たちは、翌日にマレーシアに逃亡し、その後、拘束されてシンガポールに連れ戻されています。逃亡を急いだ彼らは、サンズのホテルの部屋に79万ドル分のカジノチップを残しています。

 


◆イカサマの手口

イカサマグループは、隠し持った携帯電話を使ってカードの数字を共犯者に中継し、共犯者はExcelで作ったスプレッドシートにカードの数字を入力し割り出された結果(プレイヤーとバンカーのどちらに賭けるべきか、いくら賭けるべきか)を賭け役に伝えることで、バカラの勝率を上げていたようです。

スプレッドシートの内容は、裁判資料では明らかにされていませんが、プレイヤーがゲームを有利に進めるための計算式が含まれていたとのことです。

ここからは、筆者の推測になりますが、手口からして、おそらく遠隔でカードカウンティングが行われていたと考えられます。一般にカードカウンティングといえばブラックジャックの必勝法と思われがちですが、バカラにおいても有効です。ただし、ブラックジャックほど簡単ではなく、またそこまでの効果も期待できないため、あまり話題になることはありませんでした。

関連記事:ブラックジャックを攻略した天才達(カードカウンティング)

 

バカラのカードカウンティングの詳細は別の機会にご紹介しますが、簡単に言えば、シューの中に「4」以下のカードが多く残っている場合、プレイヤーが勝ちやすくなります。これは、低い数字のカードがシューの中に多く残っていると、合計が10を超えるケースが少なくなる、つまり、2枚のカードで9に近い数字が出やすくなるからです。

逆に、シューの中に「6」以上のカードが多く残っている場合、バンカーが勝ちやすくなります。これはシューの中に「6」以上のカードが多く残っていると、プレイヤーのカードの合計が10を超えやすくなるからです。

そして、このプレイヤーとバンカーのどちらが勝ちやすいかの条件を利用するためには、シューの中に何のカードが何枚残っているのかを正確に把握する必要があります。

 

バカラでのカードカウンティングの方法はいくつかありますが、最も難易度が高い反面、最も有効な方法は、「A」12枚「2」15枚~「Q」18枚「K」16枚のように、使われたカードを都度カウントし足し上げていくことです。使われたカードのカウントができれば、シューの中に何のカードが何枚残っているのかが把握できます。

ただし、この方法は、記憶すべき内容が多いため、頭の中だけでやるのはかなり難易度の高い作業となります。しかし、今回のイカサマグループように、外部に記録係がいれば容易に実行できます。

 

ひとつ注意しておくと、この方法はオンラインカジノのバカラには効果がありません。施設カジノのバカラの醍醐味はカードの絞りにあります。一般に、施設カジノでは、絞りによってカードが破損するため、半永久的にシャッフルを繰り返すシャッフルマシンを使用することはありません。一方で、オンラインカジノのバカラや施設カジノのミニバカラには絞りがなく、カードを破損しないためシャッフルマシンを使用することが多く、シャッフルマシンを使用するとカードをカウントしても意味がありません。

 

◆裁判の行方

タン容疑者の弁護士は、このプログラムが詐欺や不正行為に関与していた証拠はなく、「計算式の効果が、カジノが想定していた以上にゲームのオッズを変えるものであったかどうかを判断することは不可能である」と主張しています。

シンガポールのカジノ管理法では、カジノでのゲーム中にカードを数えたり記録したりする装置を使用して摘発されたプレイヤーは、最高7年の懲役、または最高15万シンガポールドルの罰金、またはその両方を科される可能性があります。

タン容疑者の判決は、11月に出る予定です。

 

◆さいごに

バカラのカードカウンティングでここまで荒稼ぎした事案は、筆者が知る限りはじめてです。
バカラは運だけのゲームだと距離を置いてきましたが、やり方によってはかなり稼げるのかもしれません。