2022年09月25日

ブラックジャックを攻略した天才達(カードトラッキング)

ブラックジャックを攻略した天才達(カードトラッキング)

ざっくり言うと

  • カードカウンティング以上の爆発力を持つカードトラッキング
  • 第1のテクニック『エースのためのカット』
  • 第2のテクニック『キーカードの順序付け』
  • 第3のテクニック『バスティング・ザ・ディーラー』

1990年代、カードカウンティングの手口がカジノ側に知れ渡った頃、まったく別の方法でブラックジャックを攻略したマサチューセッツ工科大学の若き秀才ギャンブラーたち。

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今回は、カウンティング以上の圧倒的プレイヤー優位を生み出すカードトラッキングについて紹介します。
出典は、『カジノは奴らを逃がさない!』より。


『カジノは奴らを逃がさない!』
(ベン・メズリック著,アスペクト社,2006)

 

◆第1のテクニック『エースのためのカット』

このテクニックは、シャッフル後のカードカットの際、ボトムカード(カードの束の最後のカード)を盗み見ることが大前提。
そのため、手が小さくボトムカードを隠し切れない、雑でボトムカードを隠さないディーラーを探すことから始まります。

そして、カードカットの際、運よくボトムカードを覗けてそれが♡Aだった場合、彼らはカットカードを素早く受け取り、日々の練習でつちかった技術を駆使して、決まった枚数でカットします。彼らのカット成功率は9割を超えていたようです。
このテクニックの最大のポイントは、決まった枚数でカードカットができることです。
ちなみに、熟練したマジシャンはこの技術を有しています。

例えば、ちょうど後ろから2インチのところでカットした場合、カードの枚数は60枚目のところ。後ろの束は前の束と入れ替えられ、最初の1枚目を捨てて59枚目が♡Aとなります。プレイヤーのハンドにAが配られた場合、プレイヤーの優位性は51%にもなります。

 


◆第2のテクニック『キーカードの順序付け』

例えば、ディーラーに向かって、最も左のプレイヤーが1枚目♧A、2枚目◇9、その右のプレイヤーが1枚目◇7、2枚目♡Qでゲームを終えたとします。ディーラーが一般的な手順でカードを回収すると、上から読み上げて、♧A、◇9、◇7、♡Qでカードが並びます。そして彼らは、これらのカードがディスカードラック(使用済みカードを収納するケース)のどの位置に収まったのかを覚えておきます。

カードの残り枚数が少なくなると、ディーラーはシャッフルを行います。
ひと昔前のディーラーは、シャッフルする際、カードの束を両手に持ってパラパラと交互に差し込んでいくリフルシャッフルを数回繰り返していました。そして、ディーラーがパーフェクトシャッフル呼ばれる完全に1枚ずつ交互に差し込むシャッフルをした場合、覚えたカードの順序は変わらず、それぞれの間にゴミカードが1枚加わることになります。パーフェクトシャッフルを3回繰り返せば、覚えたカード同士の間に3枚のゴミカードが挟まっている状態になります。つまり、♡Qの後の4枚目は◇7、その後の4枚目は◇9、その後の4枚目は♧Aとなります。彼らは、一連のシャッフルを注視し、この覚えたカードが束のどこに収まるかをトラッキングします。

次に何のカードが出るのかが事前にわかっているので、♡Qや♧Aが配られる所に大きくベットすれば大きく勝つことができます。

 


◆第3のテクニック『バスティング・ザ・ディーラー』

シャッフル後のカードカットの際、ボトムカードに絵札か10が見えたら、第1のテクニック同様、狙った位置でカットすることで、プレイヤーにとって絶好のチャンスを生み出します。

例えば、カードの束の最後が♡Qだった場合、ちょうど後ろから1デックの位置(52枚)でカードカットすると、後ろの束は前の束と入れ替えられ、最初の1枚目を捨てて51枚目が♡Qとなります。あとは、このカードをディーラーに回しバストさせるようプレイします。

ディーラーのホールカード(伏せられた1枚目のカード)が何かは知る由もありませんが、ディーラーの3枚目に絵札か10のカードを引かせることができれば、プレイヤーの1つのハンドにつきにつき約30%の優位性があります。つまり、プレイヤーが10,000ドルを6ヵ所にベットした場合、プレイヤーの期待利益は合計で18,000ドルになります。

第1のテクニックと第2のテクニックでは、プレイヤーにAが配られれば1ハンドに51%の優位性(絵札か10の場合、13%の優位性)をもたらしますが、第3のテクニックで絵札か10カードをディーラーに送り込むことができれば、プレイヤーの1ハンドごとに30%の優位性が生まれます。

 


◆現在のカジノでは、いずれの必勝法も使えない

第1のテクニックと第3のテクニックは、カードカット時にボトムカードを覗き見ることが前提になります。
現在のカジノでは、プラスティックでできた不透明のカットカードをカードの束の底に敷いておくことで、プレイヤーにボトムカードを一切見せないよう対策が講じられています。

第2のテクニックは、シャッフルでカードの並びが変わらないことが前提になります。
現在、主流のシャッフルでは、どんなに熟練のディーラーであってもパーフェクトシャッフルは行わず、リフルで差し込むカード枚数を1~3枚とランダムにするよう徹底されています。また、前述のリフルシャッフルと、1デック程度の束をランダムに入れ替えるストリッピングを併用することで、カードトラッキング対策が行われています。

 


◆さいごに

ケリーの公式(ケリー基準)とは、複利収益率が最も高くなる最適な資金量(投資金額)を算出する公式で、投資の神様ウォーレン・バフェットや、ブラックジャックのカードカウンティングでお馴染みのエドワード・ソープが使っている手法ともいわれています。

ケリーの公式が示すギャンブルの必勝法は、

①期待値がマイナスのギャンブルには賭けない
②ケリーの公式が示す値を下回る賭け金で勝負する(賭けすぎない)

つまり、期待値がプラスのゲームをいかに探すかにつきます。

マサチューセッツ工科大学の若き秀才ギャンブラーたちは、ディーラーのわずかな隙をついて、期待値がプラスになるゲームを見つけ莫大な富を築きました。

現在では、彼らのテクニックは対策が講じられ使用できませんが、このカードトラッキングのストーリーは、ギャンブラーが胴元を駆逐する大きな可能性を示しています。

 

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か(ケリーの公式より)