2023年02月19日

本命・大穴への過度な期待は禁物(プロスペクト理論)

本命・大穴への過度な期待は禁物(プロスペクト理論)

ざっくり言うと

  • ヒトは、非常に高い確率をより重く受け止め、非常に低い確率をありえそうと感じてしまう
  • 具体的には、競馬の本命が鉄板に、宝くじの1等が当たりやすく感じてしまう
  • 回収率は、本命馬グループは77.28%、大穴馬グループは25.12%、得票率が中程のグループは約90%
  • 競馬で賭けるなら「本命」「大穴」は外すべきというひとつの結論

2002年にノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマン博士プロスペクト理論をわかりやすく紹介した『行動経済学ってそういうことだったのか! -世界一やさしい「使える経済学」5つの授業-』


『行動経済学ってそういうことだったのか! -世界一やさしい「使える経済学」5つの授業-』
(太宰北斗著,ワニブックス,2022)

 

プロスペクト理論とは、「利得の局面ではリスクを回避して、損失の局面であればリスクを追求する」という考え方です。ここでいうリスクとは、悪いことでも良いことでも、起こりえる出来事が不確実であればすべてリスクとなります。

そして、カーネマン博士は、より確実な確率を重く受け止め評価する「確実性効果」非常に低い確率の出来事をありえそうと感じてしまう「可能性効果」を提唱しています。具体的には、競馬の本命が鉄板に、宝くじの1等が当たりやすく感じてしまうとのことです。そして、これを図化したものが「確率加重関数」となります。

 


出典:『行動経済学ってそういうことだったのか! -世界一やさしい「使える経済学」5つの授業-』

 


◆競馬で賭けるなら「本命」「大穴」は外すべき!

筆者の太宰北斗氏は、2009年のJRAの約3,000レース、のべ5万頭に対する馬券購入実績とレース結果を分析し、カーネマン博士の主張を裏付けています。

論文:競馬とプロスペクト理論:微小確率の過大評価の実証分析

筆者は、主観的評価にギャンブラーがその馬を1着になると予想した得票率、客観的評価にその馬が1着になったかどうかのレース結果として、回収率を分析しています。


出典:『行動経済学ってそういうことだったのか! -世界一やさしい「使える経済学」5つの授業-』

※得票率の高い順にすべての競走馬を10グループに分類。

 

本命馬グループは、得票率が30.15%に対して勝率が29.12%で、加熱度は1.04倍となり主観確率が客観確率を上回り過大評価されていることがわかります。

大穴馬グループは、得票率が0.28%に対して勝率が0.09%で、加熱度は3.18倍となり主観確率が客観確率を大きく上回り、やはり、こちらも過大評価されています。

得票率が中程のグループは、過熱度が1倍を下回っており、過小評価されていることがわかります。

 

そして、上記表の最も右の列「推定回収率」は、控除率(胴元の取り分)を20%として計算した結果、本命馬グループは77.28%大穴馬グループは25.12%得票率が中程のグループは約90%となっており、競馬で賭けるなら「本命」「大穴」は外すべきというひとつの結論が導き出されています。

 


◆さいごに

オッズだけで判断すれば、どのグループの馬券を買っても収支はマイナス。
そして、オッズだけでいずれかの馬券を買うなら、回収率が約9割の中穴を狙うべきという結論となります。

結局のところ、競馬で勝つためには、馬主になるか、卓越した知識を持つか、良質なシステムベットに頼るしかないという話です。