2022年02月16日

行動経済学から読み解くギャンブラーの不合理8選

行動経済学から読み解くギャンブラーの不合理8選

ざっくり言うと

  • 行動経済学から読み解くギャンブラーの不合理8選
  • プロスペクト理論、ギャンブラーの誤謬、ハウス・マネー効果、帳消し効果
  • サンクコスト効果、確証バイアス、現状維持バイアス、認知的不協和

そもそも行動経済学とは?

行動経済学は、買い物やギャンブルなどの身近な経済行動について心理学を交えて分析する学問で、ダニエル・カーネマン(2002年)、ロバート・シラー(2013年)リチャード・セイラー(2017年)と立て続けにノーベル経済学賞を排出したことで、現在、もっとも注目されている経済学のひとつです。

行動経済学では、「人は必ずしも合理的な行動をするとは限らない」という考えを大前提とします。

このギャンブラーの不合理(道理や理屈にかなっていないこと)は、カジノにしろ、パチンコにしろ、競馬にしろ、胴元に大きな利益をもたらします。逆に、すべてのギャンブラーが合理的に行動したら、胴元がこれほど儲かることもありません。

今回は、行動経済学から読み解くギャンブラーの不合理8選です。


不合理①
・100万円勝つ喜びと、100万円負けるショックでは、多くの人が失う100万円を大きいと感じる

<プロスペクト理論 (Prospect theory)>
ひとつめは、やはり行動経済学といえばこちら、プロスペクト理論。
目の前に利益があると、利益が手に入らないというリスクの回避を優先し、損失を目の前にすると、損失そのものを回避しようとする傾向。
これだけではちょっと難解なので、プロスペクト理論の生みの親、カーネマン博士の有名な実験結果から補足します。

<質問1>あなたはどちらを選びますか?
A:100万円が無条件で手に入る
B:コインを投げ、表が出たら200万円が手に入るが、裏が出たら何も手に入らない

<質問2>あなたは200万円の負債を抱えているものとして、どちらを選びますか?
A:無条件で負債が100万円減額され、負債総額が100万円となる
B:コインを投げ、表が出たら支払いが全額免除されるが、裏が出たら負債総額は変わらない

多くの人が、質問1ではAを、質問2ではBを選び、また、質問1でAを選んだ堅実な人のほぼすべてが質問2ではギャンブル性の高いBを選ぶことが知られています。

このことから、100万円を手に入れる喜びと、100万円を失うショックでは、どちらも同じ100万円であるにもかかわらず、多くの人が失う100万円を大きいと感じるようです。

 

不合理②
・バンカーが続けて10回勝ったから、次はさすがにプレイヤーが勝つだろう
・バンカーが続けて10回勝ったから、次もバンカーが勝つだろう

<ギャンブラーの誤謬 (Gambler’s Fallacy)>
自分の主観や経験によって合理的な根拠がないにもかかわらず、確率論に基づいた予測が歪められてしまう傾向。

カジノの王様といわれる「バカラ」は、「バンカー」が勝つか「プレイヤー」が勝つかを当てる二者択一の丁半博打です。「バンカー」と「プレイヤー」が勝つ確立はそれぞれ約2分の1とほぼ同じ。引き分け(TIE:タイ)の場合は、賭け金はそのまま返ってきます。
(正確には、ルールで少しだけバンカーが有利になっています。バンカーの勝ち:0.458597、プレイヤーの勝ち:0.446247)

例えば、バンカーが続けて10回勝ったとします。俗にいう10目ヅラ(10目の大ヅラ)です。あなたは、次のゲームでバンカーとプレイヤーのどちらに賭けますか?

初心者は、さすがに11回続けてバンカーはないだろうとプレイヤーに賭ける傾向が強くなり、一方で、バカラを知り尽くしたベテランほどバンカーに賭ける傾向が強くなるのではないでしょうか。バカラでは、大ヅラに乗る(勝ち続けている方に賭ける)のが鉄板の戦術とされています。

しかし、この初心者、ベテランいずれの傾向も、確率的には何の根拠もありません。バカラは、これから起こることが過去の結果に左右されない独立事象のゲームです。過去にどれだけバンカーの勝ちが続いても、次にバンカーが勝つ確率に変わりはありません。

(このペースで書いていると書き終わらないので、以下、ポイントのみとなりますこと、ご了承ください。行動経済学はGamble GOの専門分野でもあるので、詳細は改めて紹介したいと思います。)


不合理③
・ブラックジャックで100ドルを基本にベットしていたが、勝ちが5,000ドルを超えたので、ベット金額を300ドルに変えた

<ハウス・マネー効果 (House Money Effect)>
いきなり大金を手に入れた時は気が大きくなり、その後、大胆なリスク行動をとってしまう傾向。

 

不合理④
・ポーカーで少しずつ負けが込んでいき、最後には、あまり良い手でなくてもオールイン(全額勝負)してしまう

<帳消し効果 (Break Even Effect)>
負けを取り戻そうとすると、リスク志向になる傾向。

 

不合理⑤
・パチンコで同じ台に5万円つぎ込んだので、そろそろ当たるだろう
・わざわざラスベガスまで来たので、負けが込んでいるけどもう一勝負しよう

<サンクコスト効果 (コンコルド効果:Concorde effect)>
それまでに投資したお金や時間が無駄になることを惜しみ、後には引けなくなってしまい、正しい判断を誤ってしまう傾向。

 

不合理⑥
・パドックでお目当ての馬を見ると、目を輝かせながらキョロキョロしている。これは調子が良さそうだ

<確証バイアス (Confirmation bias)>
ある仮説を確認する際、自分の先入観や信念を肯定的に証明する情報を重んじて、これに反するような情報を軽んじる傾向。
気合が目に表れるのは、人間も馬も同じです。目が輝いている馬はコンディションがいい証拠、一方で、よそ見をしている馬は気合いが入っていない証拠と言われています。その馬に賭ける人は目の輝きを重視してOKとし、その馬に賭けない人はよそ見を重視してNGと判断します。

 

不合理⑦
・パチスロで隣の台が高設定っぽい挙動にもかかわらず、自分が打っている台から動けない

<現状維持バイアス (Status quo bias)>
現状を変えることで得られるメリットより、現状を変えることで起こるデメリットの方が大きいと感じて、現状を維持しようとする傾向。

 

不合理⑧
・ギャンブルで負けが込んでいる状況では、可能性が低いと分かっていても逆転できると考える
・今日は負けたけど、たくさん遊べたからOKとしよう

<認知的不協和 (Cognitive dissonance)>
自分の中で矛盾が生まれると、自身を正当化させるために、思考を変えてその矛盾を解消しようとする傾向。

 

ここまでの8選、みなさんにも思い当たる節があるのではないでしょうか?
これらの不合理を知っていて勝負するのと、知らずに勝負するのは大違いです。
そして、不合理を減らしていけば、ギャンブルの勝率は自ずと向上していくはずです。