2024年01月08日

日本人は意地悪?ギャンブラーには向いていないかも

小ネタ
日本人は意地悪?ギャンブラーには向いていないかも

ざっくり言うと

  • スパイト行動とは、自分の利益が減っても相手の足を引っ張る傾向
  • 日本人は米国人や中国人と比較して、スパイト行動を取りやすい
  • ある実験でのスパイト行動の割合は、南カリフォルニア大学12%、筑波大学63%

1990年代、大阪大学の西條辰義教授らが行った研究によると、被験者にあるゲームをしてもらったところ、日本人は米国人や中国人と比較して、自分の利益が減っても他人の足を引っ張る傾向が強いという結果が得られたそうです。

この傾向は、スパイト(悪意、意地悪)行動と呼ばれています。

 

<ゲームの概要>

・Aさん(自分)とBさん(相手)が対戦するゲーム
・AさんとBさんは、最初に10ドルずつ所持している
・所持している金額から0~10ドルまでの間で、任意の金額を出し合います
・それぞれが出した合計金額の1.5倍の賞金がそれぞれに支払われます
・ゲームは10回行われます

 

例えば、

AもBも10ドル出せば、AもBも30ドル(合計金額20ドルの1.5倍が支払われる)

Aが10ドル、Bが0ドル出せば、Aは15ドル(所持している0ドル+賞金15ドル)、Bは25ドル(所持している10ドル+賞金15ドル)

Aが0ドル、Bが10ドル出せば、Aは25ドル(所持している10ドル+賞金15ドル)、Bは15ドル(所持している0ドル+賞金15ドル)

AもBも0ドルならば、Aは10ドル(所持している10ドル+賞金0ドル)、Bは10ドル(所持している10ドル+賞金0ドル)

 

言わずもがなですが、最終的にできるだけ多くのお金を稼ぐことを主眼に考えれば、相手がいくら出そうと自分は10ドル出すことが最適戦略となります。しかし、このゲームでは、0~9ドルを選択する被験者が複数いたそうです。なぜ、取り分が少なくなることが分かっていながら、出す金額を減らす選択がなされたのでしょうか?

自分が出さず相手が10ドル出せば、相手の取り分は15ドルですが、自分の取り分は25ドルとなります。両方が10ドル出した場合の取り分の30ドルよりも少なくなるものの相手よりも取り分が多くなり、結果、相手の足を引っ張ることができます。相手を出し抜くことを主眼に考えれば、自分が0ドル出す(=1ドルも出さない)ことが最適戦略となります。

つまり、できるだけ多くのお金を求めるなら「出す」のがベスト、相手を出し抜くのなら「出さない」のがベストとなり、被験者はこの間で心が揺れ動いていたと考えられます。研究チームは、この現象を「スパイト・ジレンマ」と名付けています。

 

 

◆日本人は他国民より意地悪?

1997年、西條教授らの研究によると、同様のゲームを筑波大学、都立大学、南カリフォルニア大学、パーデュー大学で実施したところ、日本人は相手に出し抜かれるくらいなら、自分が損してでもダメージを与えたいと考える傾向が他国より強かったそうです。

この実験では、お金を出す前にまずゲームへの「参加/不参加」を選び、それを表明するというルールが追加されました。こうすることで、相手が不参加で、自分が参加となった場合、参加者は自分が出す金額を少なくすることで相手のリターンを減らすという別のスパイト行動が見られるようになります。

最初の5回までで、自分がひとりだけお金を出すことになった場合、参加者がほかの不参加者の利益を下げるためスパイト行動を選んだ割合は、南カリフォルニア大学では12%なのに対し、筑波大学では63%でした。また、都立大学とパーデュー大学の間でも同様の傾向が観られたとのことです。

また、その後の実験では、カナダ人や中国人などと比較しても、日本人はスパイト行動を選ぶ割合が多いことが明らかにされています。

 

 

◆さいごに

自分の利益を減らしてでも他人の足を引っ張るスパイト行動は、ギャンブルにおいては愚の骨頂。
ギャンブラーの目的は、最終的に1円でも多くのお金を稼ぐことに尽きます。