ざっくり言うと
- 警視庁は「PayPay」と「ライトコイン」を無登録で交換したとして高校3年生の男を書類送検
- 兵庫、群馬県警などの合同捜査本部は、違法換金業グループの十数人を逮捕
- 抜け道などを使ったオンラインカジノでのプレイは、逮捕リスクを格段に増加させる
2024年3月17日、言わずもがなですが、日本国内から海外のオンラインカジノでプレイすることは違法です。しかし、簡単に海外のオンラインカジノで遊べているのが実情でもあります。ただし、海外のオンラインカジノは本人確認が必要なため、そこから身バレし逮捕されるリスクはゼロではありません。
また、18歳未満の未成年者は、オンラインカジノの本人確認時、年齢制限により登録ができず、また、決済に使用するクレジットカードも暗号資産(仮想通貨)口座も保有することができません。そのため、未成年者がオンラインカジノでプレイするためには、何らかの抜け道が必要となります。違法換金業者は、送金を行うと登録済みのアカウントにアクセスできる裏ルートを提供しており、この抜け道を手配していた違法換金業者が相次いで摘発されています。
◆違法換金業者も客の大半も10代の若者
2024年3月4日、警視庁サイバー犯罪対策課は、「PayPay」と暗号資産の「ライトコイン(LTC)」を無登録で交換していたとして、資金決済法違反容疑で、宮崎県都城市在住の高校3年生の男を書類送検しました。
高校3年生の男は、X(旧ツイッター)に「暗号資産と電子マネーを交換します」などと投稿し、応じた顧客と直接連絡を取り合って、「PayPay」と「ライトコイン」を交換していました。
同課によると、2022年9月~23年10月、16~60歳の少なくとも30人から手数料などとして約300万円を得ており、客の20人は10代の若者でオンラインカジノ「ステーク(Stake)」の利用目的の交換だったとみられています。
送検容疑は、2023年7~9月、男子高校生ら3人に対し現金や電子マネーと暗号資産を交換した、2023年8月、40代の女性会社員から「PayPay」残高計2万5,000円相当を受け取り対価として暗号資産を売却するなど、無登録で交換業を営んだ疑いが持たれています。
高校3年生の男は、「オンラインカジノで遊ぶ金が欲しくてやった」と容疑を認めているとのことです。
◆本人確認を経ずにオンラインカジノで遊ぶ抜け道を仕組み化
2024年3月13日、兵庫、群馬県警などの合同捜査本部は、ネット上のフリーマーケットで架空の取引を繰り返したとして、違法換金業グループを電子計算機使用詐欺の疑いで逮捕しました。逮捕されたのは、名古屋市在住の吉田容疑者(21)、専門学生の藤井容疑者(23)ら十数人。
捜査関係者によると、違法換金業グループは、電子マネーを暗号資産に換金し、本人確認を経ずにオンラインカジノで遊ぶ抜け道をつくり、ネットを通じてカジノ利用者を集め手数料を稼いでいたとみられています。
オンラインカジノで使う暗号資産は未成年は購入できないため、グループの仕組みを使っていた大半が未成年のオンラインカジノ利用者で、電子マネーの入金は1回当たり数百円〜数万円。
客からの電子マネーでの入金は2023年中の半年間だけで約10億5,000万円に上っており、捜査本部は賭博ほう助などの容疑も視野に捜査を進めています。
グループが対象としていたオンラインカジノは、オランダ領キュラソーの企業が運営する「ステーク」。賭けには仮想通貨「ライトコイン」が使われますが、購入時に本人確認が必要なため、捜査機関の追跡で賭博行為が発覚するリスクがあります。
グループは、本人確認なしでアカウント取得と購入ができる手軽な電子マネー「ペイペイ・マネーライト」を使用し、カジノ利用者から電子マネーを受け取ると、2割の手数料を引いて「ライトコイン」で送り返すことで、賭博行為との関わりが特定しにくい仕組みを構築していました。
また、「ペイペイ・マネーライト」は出金ができないため、違法換金業グループは、ネット上のフリマに架空の商品を出品し、それを自分たちで落札。「ペイペイ・マネーライト」で支払い、フリマ運営会社から出品者への支払いを現金で受けとる現金化の仕組みも構築していました。また、実態のない店舗での架空の電子決済や、換金率の高いゲーム機の転売などでも現金化を図っていた疑いも持たれています。
そのほか、逮捕された違法換金業グループによると、入金の中には資金洗浄目的と思われる数百万円の大口もあり、依頼客の一部が犯罪収益のマネーロンダリングのために換金の仕組みを悪用していたとみられています。
<5月8日追記>
合同捜査本部は、吉田容疑者、藤井容疑者ら3人を再逮捕しました。3人の逮捕は5回目。再逮捕容疑は他の5人と共謀して2023年10~11月、未成年を含む複数人から電子マネーの送金を受け、オンラインカジノで使用するライトコインに交換した常習賭博ほう助の疑い。吉田容疑者らは独自の換金システムを運営し20%の手数料を取っており、システムには2022年8月~23年11月ごろに計約23億円の電子マネーの送金を受けた履歴が残っていたとのことです。
<11月8日追記>
藤井容疑者の判決公判が神戸地裁で行われ、裁判官は懲役2年、執行猶予4年(求刑懲役2年6月)を言い渡しました。
判決によると、2023年10~11月、同罪などで公判中の吉田容疑者らと共謀し、客がオンラインカジノで賭博をした際、暗号資産がカジノサイトで利用できることを知りながら、計24回にわたり電子マネーを仮想通貨に換金。同年1月、集めた電子マネーを使ってインターネット上のフリーマーケットで架空の取引をし、違法に約170万円を得たとしています。裁判官は、賭博を手助けするシステムを構築して運用し、集めた電子マネーを違法に現金化した「巧妙な犯罪」と指摘。共犯者から多額の報酬を受け取ったとして「刑事責任は軽視できない」としています。
◆さいごに
今回の事件では、幸いにも正しい換金が成立していますが、入金したにもかかわらず換金すらされないケースも横行しています。
また、抜け道などを使ったオンラインカジノでのプレイは、逮捕されるリスクを格段に増加させます。
コロナ禍も収束し気軽に海外に行けるようになった今、あえてリスクあるオンラインカジノで遊ぶメリットはありません。