ざっくり言うと
- 筑波大学医学医療系の山田洋准教授らの論文より
- 大当たり後は、確率以上に「もう1回当たりそうだ」と感じる
- 激熱リーチをはずすと、大当たりを引いたとき以上に強く「次は当たる」と感じる
2023年5月26日、筑波大学医学医療系の山田洋准教授らの研究チームは、ギャンブルで大当たりを経験した後、ヒトは客観的な確率論に従わずに「もう1回当たりそうだ」と判断しがちになり、高い確率で当たると期待してはすれた後、ヒトは大当たりを引き当てたとき以上に強く「次は当たる」と感じてしまうことを発見しました。
この研究チームは、プロスペクト理論(※)と強化学習理論(※)を統合した「動的プロスペクト理論」を構築し、不確実な状況におけるヒトの判断・行動をひとつの統一理論で説明する事に成功しました。
※プロスペクト理論:宝くじの1等の当選確率は極めて低いのに当たるかもしれないと思ってつい買ってしまう。このように、金銭の価値が主観的に歪み、正確に金額に比例しない。
※強化学習理論:ヒトの主観は過去の報酬経験を踏まえて変わり、最も儲かる判断を選ぶように学習する。
◆実験の概要
ふたつの異なる円グラフを提示し、どちらかを選んでもらう。
円グラフの緑色が示すのは、当たった時の報酬の量
円グラフの青色が示すのは、当たりやすさ
下記の円グラフの場合、左の円グラフは当たりにくいが当たった時に貰える報酬が多い、右の円グラフは当たりやすいが当たった時にもらえる報酬が少ないことを示しています。
(出典:ヒトもサルも予想外の大当たりが、次の判断を狂わせる)
サルを対象とした実験では、緑色は当たりを選んだときにもらえるジュースの量を意味し、円グラフの区間(目盛り)の1つにつき0.1ミリリットルで、最大1.0ミリリットルが報酬として与えられた。また、数秒経つと円グラフの代わりに2つの点が表示され、サルが注視した点があった方の円グラフを「サルが選んだ」と判定し、当たりを選んだときのみジュースを与えた。
ヒトを対象にした実験では、仕組みはサルの実験と同じで、当せん時にはジュースの代わりに1~5ドルの報酬が1ドル刻みで与えられた。また、円グラフを選ぶときは視線ではなく手で操作した。
実験の試行回数は、サルは2匹で、1匹は242日で4万4,883回、もう1匹は127日かけて1万9,292回。ヒトは72人で250回ずつ、合計1万8,000回。
◆実験結果
この研究チームは、プロスペクト理論に基づく数理モデルを用いてヒトとサルの行動データを解析しています。
結果、ヒトとサルの主観的な価値(利得)と確率の感じ方を数値化したところ、いずれも思い込み(利得の主観)が客観的な値を上回ることが明らかにされています。
(出典:ヒトもサルも予想外の大当たりが、次の判断を狂わせる)
オレンジの破線:サルとヒトの主観的な価値(利得)と主観的な確率の感じ方
黒の破線:客観的な数値
更に、「動的プロスペクト理論」で行動データを解析し、予想外に大きな利得が得られた直後、ヒトとサルの確率に関する判断が全体に高まっている、つまり大当たり後、「もう一回当たりそうだ」と感じている。
加えて、高い確率で当たると期待して報酬を得られなかった直後、ヒトは大当たりを引き当てたとき以上に強く「次は当たる」と感じてしまうことを明らかにしています。
(出典:ヒトもサルも予想外の大当たりが、次の判断を狂わせる)
オレンジの実線:「予想外に大きな利得を得た直後」
黒の破線:「予想通りの直後」
オレンジの破線:「高い確率で得られると思っていた大きな利得を逃した直後」
◆さいごに
結局のところ、大当たりをひいても、激熱リーチをはずしても、「次も」「次こそ」当たると感じてしまい沼にはまっていく。
つまり、期待値が1以下のギャンブルは、やったら負けという話です。
ちなみに、世の中のギャンブルの99%以上は期待値が1以下です。例外は、パチンコの良釘台(ボーダー以上に回る)とパチスロの高設定台(機械割100%以上)ぐらいです。新台と旧イベント日狙いに徹すれば、理論上は勝てるはずなんですけどね。