2022年09月18日

ラスベガスで286億円負けた男テレンス・ワタナベ、映画化へ

小ネタ
ラスベガスで286億円負けた男テレンス・ワタナベ、映画化へ

ざっくり言うと

  • カジノで大負けした日系アメリカ人のテレンス・ワタナベ氏
  • 2007年、ワタナベ氏は、その年だけで1億2,700万ドル(約182億円)負ける
  • シーザース社の2007年のギャンブル収入の約5.6%がワタナベ氏によるもの

裕福なビジネスマンだったテレンス・ワタナベ氏(俗称:テリー・ワタナベ氏)は、主にシーザース・パレスとリオで2億ドル(約286億円)以上を失ったことで、ラスベガス最大の負け組の一人となっています。今、彼の惨めな負けっぷりを描いた映画の製作が計画されているそうです。

Biggest Las Vegas Loser Terry Watanabe Will Be Subject of Film
(ラスベガス最大の敗者、テリー・ワタナベが映画の題材に決定)

Foundation Media Partners Secures Book, Film & Doc Rights To Story Of Las Vegas’ Biggest High Roller Terry Watanabe
(Foundation Media Partners、ラスベガス最大のハイローラー、テリー・ワタナベの書籍、映画、ドキュメンタリーの権利を獲得)

 

◆テレンス・ワタナベ氏の生い立ち

ネブラスカ州オマハ出身の日系アメリカ人 テレンス・ワタナベ氏は、1977年、20歳のときに父が設立したおもちゃ輸入販売のオリエンタルトレーディング社を引き継ぎ事業を拡大させ、2000年には売上3億ドル(約429億円)の大企業に成長させました。

2000年、ワタナベ氏は、オリエンタルトレーディング社の全株式をロサンゼルスの投資会社ブレントウッド・アソシエイツに社に売却し社長を辞任します。

その後、彼は慈善家となり、エイズ関連の団体に数百万ドルの寄付をしたり、民主党(オバマ政権)に50万ドルの献金をするなど、豊富な資産を社会貢献や政治のために使い、大きな名声を得ることになります。

しかし、それまでの生活を支えていたビジネスがなくなると、彼はすぐに退屈になってしまい結婚相手にも恵まれなかったことで、アイオワ州のハラーズ・カウンシル・ブラフでギャンブルを始め、最終的にはラスベガスで全財産を失ってしまいます。

 

◆ラスベガス最大のクジラ

2003年、ワタナベ氏は、ウィン・ラスベガスに滞在し、ギャンブルに明け暮れていました。しかし、ワタナベ氏の派手なギャンブルは当時のCEOスティーブ・ウィン氏の目に留まり、「ギャンブル依存症とアルコール依存症」であるとして出入り禁止となります。

豊富な資産を持ち、湯水のようにお金を使うワタナベ氏は、シーザース・エンターテインメント社に買収された当時のハラーズ・カジノに破格の待遇で迎え入れられます。

ハラーズ・カジノは、ワタナベ氏をシーザーズ・リワード最上位「セブンスター」の更に上の「チェアマン」と位置づけ、スイートルームを提供し、3人の係員を付け、航空運賃として1万2,500ドル/月、ギフトショップでの50万ドルのクレジット、50万ドル損失時に15%のキャッシュバック、特別なハイリミットゲーム、その他のインセンティブを提供し超VIP待遇でもてなします。そして、カジノ側の目論見通りワタナベ氏は、長いときは24時間カジノに入り浸り、1回のセッションで500万ドル(約7億1,500万円)負けることもあった。

結果、2007年、シーザース・エンターテイメント社の年間ギャンブル収入の約5.6%をワタナベ氏一人で占めることになります。

 

◆シーザーズとの訴訟

2007年、ワタナベ氏は、その年だけで1億2,700万ドル(約182億円)負けています。この金額について米放送局ABCは「ラスベガス史上最大の負けのひとつ」と伝えています。

ワタナベ氏は、膨れあがった負債のほとんどを返済しましたが、最後の1,400万ドル(約20億円)の返済を拒否します。ワタナベ氏は、返済拒否の理由を「カジノが提供した酒と薬によって、何をしているのか理解できない状態まで酩酊していた」としています。

シーザース・エンターテインメント社は訴訟を起こし、ワタナベ氏は刑事告訴されることになります。

シーザース・エンターテインメント社は、「ワタナベ氏がマリファナやコカインを使用しており、従業員にも嫌がらせをし続けた。また、カジノが提供した薬は、当時背中を痛めていためワタナベ氏のために用意した鎮痛剤だった」と主張しました。

しかし、ニュージャージー州の賭博委員会は、シーザース・エンターテインメント社が高度の酩酊状態だったワタナベ氏がギャンブルをすることを止めなかったとして、22万5千ドルの罰金を科します。

結果、2010年、ワタナベ氏とシーザース・エンターテインメント社は、民事訴訟と刑事訴訟の両方で和解します。

 

◆最後は闘病生活

2017年、無一文になったテレンス・ワタナベ氏は、自身の前立腺がん手術のための10万ドルを募るため、クラウドファンディングGoFundMeでプロジェクトを立ち上げました。結果、彼のこれまでの社会貢献活動が評価され、目標の10万ドルには届かなかったものの、総額28,610ドルが寄付されました。

 


BIGGEST POKER LOSER IN THE HISTORY OF VEGAS(4分15秒)

 


◆さいごに

ハイローラーの愚かさと、カジノの狡猾さを明らかにする映画の公開が待ち遠しいです。